まるで夢のようだといったらきっと君は笑うんだろうな














付き合い始めてからいろいろな三上を見た。いろいろな三上を知った。
たとえば冷たそうに見えて意外と優しいところとか、
あの自信は努力によって生まれ、支えられているんだとか。
クラスメートの三上 亮じゃなく、サッカー部の三上 亮じゃなく、
三上 亮という一人の人間を知る度、私は嬉しかった。
三上が私にだけ素顔を見せてくれることが何より嬉しかった。





付き合い始めてしばらく経った頃。
私は自分が一度も三上に好きだと伝えてないことに気が付いた。
三上はちゃんと私に言ってくれたけど。
「あぁ?別に関係ねえよ。お前見てれば俺にベタ惚れだってわかるからな」
そう笑って言う三上にムカついた。
「なに、言ってんの。ベタ惚れは三上のほうじゃない」
プイっと顔を背けて負けずと言い返した。
見ていなくても三上が笑っているのがわかる。
「あぁ、そうだよ。俺はお前にベタ惚れ」
やっぱり笑ったまま、三上に後ろから抱き締められた。
と言えば聞こえはいいかもしれないが、実際は抱きついてきたのほうが近い。
「どさくさに紛れて、なに甘えてんの」
これが三上と付き合い始めて一番驚いたことだった。
クラスメートだったら絶対に見ることができなかった三上の一面。
以前の彼女に対して、そんなことは一度もなかったと渋沢くんが言っていたけど、
本当かどうかわからない。
「いいじゃねえかよ。お前は俺の彼女だし」
そう言った後、三上の腕に力が入ったのがわかった。
「三上、どうしたの?」
三上の態度、雰囲気がいつもと違う感じがして聞いてみた。
「ん?なんか夢みてえだなっておもってさ」
「夢?なんで?」
さ、はじめ俺のこと、クラスメートとしてしか意識してなかっただろ?」
「うーん。そうだね」
確かにカッコいいとは思っていたけど、特別に意識はしてなかった。
渋沢くんも同様。いい人だし好きだけど、あくまで友達の範囲で。
「だから絶対だめだと思ってた。俺、ろくな噂なかったし」
「確かにね〜」
三上ってホントろくな噂がない。
ま、流れてる噂のほとんどが誤解らしいけど。
否定するとか、なんとかすればいいのに、
面倒だって放っておくから余計に話が膨らむんだと渋沢くんが言っていた。私もそう思う。
噂というのは留まるところを知らない。
放っておくとどんどん尾鰭が付き、本人の知らないところで雪だるまになっているなんてよくあることだ。
「おい、そこで肯定すんなよ」
「だって、三上が自分で言ったんでしょ。ろくな噂ないって」
「彼女なら、そこで否定するなりフォローするのが普通だろ?」
「やーだよ♪」
「このやろ!」
三上からの容赦ないくすぐり攻撃。しかも私の弱い横腹を集中的に。
「いや〜やめてやめて〜」
三上の腕の中から必死に逃げようとするが、如何せん体勢が悪すぎる。
私のお腹の前で三上の腕がクロスしているから逃げられない。
「キャハハハ。ちょっ‥三上!マジやめて〜」
「悪いと思ってるか〜?」
「思ってる。思ってるからストップ!ストップ!」









この幸せはいつまでも続くんだと思って疑っていなかった。

あの日が訪れるまでは‥

















どうせ甘々を書くならヒロインに甘える三上先輩が書きたいと思いまして出来てしまった話。
なので、いつもにも増して三上先輩が三上先輩じゃありません。
まぁ、こういう三上先輩でもいいですよね?
やっと悲恋の『ひ』の字が見えてきました。遅‥

2002/03/11



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