「そういえば英士くんのほうはどうなの?サッカーのほうは結人から聞いてるけど、恋愛関係とかは?」 「彼女はいないけど好きな人はいるよ」 「え?ホント?そんなの初耳だよ!」 「誰にも言ったことなかったし。あ、結人たちには内緒にしてて」 OKと嬉しそうに親指を立てたの瞳はキラキラと輝いていた。 まったく、女の子ってどうしてこんなに他人の恋愛話が好きなんだろう。 「私、英士くんはサッカーが恋人なのかと思ってたよ」 「そんなことあるわけないでしょ」 「なんでその人に気持ちを言わないの?」 「いろいろとね。勇気が出ないんだ」 「英士くんらしくないな〜バシッと言いたいことは伝えなきゃ!」 伝えられたらいいだろうけど、そうしたらきっと今までの俺たちの関係は壊れる。 俺の想いを知って知らん顔ができるほど、も結人も器用じゃないから。 ぎくしゃくした雰囲気で結人やから作り笑顔をもらうのは嫌だから。 だったら今のままのほうが辛くないから。 先のことばかり考えて動けない。俺はどうしようもない臆病者だった。 「、ちょっと手を貸してほしいんだけどいい?」 言って差し出した手は、笑ってしまうほど震えていた。 本当は抱きしめたかった。ほんの一瞬でもいいから彼女をこの腕に。 でもそんなことしたら、手放せなくなりそうだったから。 そのまま他人の花嫁をさらってしまいそうで怖かったから。 「? うん、いいよ」 互いに静かに重なり合った手と手。その白く華奢な手の甲に口付けた。 俺のなかにある、ありったけの想いを込めて。 「英士くん‥///」 「」 ピーンポーン♪ピーンポーン♪ 突如空間を遮り、鳴り響いたインターホン。 世界の向こう側にいるのが誰かなんて、いちいち見なくてもわかる。 「なんてね。そろそろ行きなよ。花婿が待ってるから」 は小さく笑って、その表情は今にも泣きそうだった。 離れていく細い指の先と小さくなっていく足音。愛する姫を迎えに来た王子様の登場。 停止した空間の扉が開く音と共に消えていく気配。 姫の幸せの園は此処に存在しない。 次第に視界が霞んで、頬を伝った雫の懐かしさすら感じられず瞳を伏せた。 「‥」 さよなら 涙こぼれるほど恋焦がれた人… じつは英士くんに王子様をやって欲しかっただけだったり(爆) 2003/07/31 |