遂に明日か。 カレンダーを見て、独り心の中で思う。 もし誰かが今の俺をみたら、馬鹿みたいだと思うだろう。 自分でも馬鹿みたいだと思うし。 だってきっと、他の奴にしてみたら明日は何でもない普通の一日で。 アイツにしてみても明日は何でもない普通の一日で。 昨日と今日と、何も変わらない一日でしかないだろうから。 でも、俺にとっては明日は唯一のきっかけ。 きっと伝えよう。明日しかないと、そう思うから。 「三上、朝だぞ」 同室者の声で一日は始まる。 いつもと変わらない朝。 違うのはきっと俺だけなんだろう。 今日は午前中から夕方までが部活。 せっかくの春休みなのに、って周りは思うかもしれないが、サッカーは自分が好きでやっているわけだから苦にならない。 「早く着替えないときてしまうぞ」 「あぁ、わかってる」 そんな会話を交わして着替え終わった瞬間、バンッとドアが開かれた。 「三上センパイ、おはよーございまっすvv」 いつものとおり、藤代が朝の挨拶と、一緒に朝食を食べようと誘いにくる。 ったく、ノックぐらいしろって毎日のように言ってんのに。 ま、着替え終わってたわけだから別にいいけど。 「おはようございます。キャプテン、三上先輩」 藤代の後ろから挨拶をしたのは藤代の同室者の笠井。 こっちは礼儀正しく頭までちゃんと下げる。 「あぁ。おはよ、笠井」 ホント、こいつらって正反対だよな。足して2で割ればちょうどいいんじゃねえ? 「む〜!なんで竹巳には挨拶返して俺には返してくれないんすか〜!」 頬を膨らませて、藤代からの抗議。 「お前のは礼儀正しくねえからだよ」 「ヒドイっす。俺、三上先輩の恋人なのに〜」 ったく、また勝手なこと言ってやがるし。 「誰が恋人だ、誰が」 しかもそんなデカイ声で言うなって。下手したらドアの向こうまで聞こえちまうじゃねえか。 「先輩ってば、照れなくてもいいのに〜」 「照れてねえよ。勝手なこと言ってんな」 「おいおい、三上も藤代もその辺にしておけ。朝食に遅れるぞ」 「あ、そうだ。朝ご飯、朝ご飯vv」 そう嬉しそうに飛び出した藤代を、呆れたような顔をして笠井が追う。 「三上」 俺も後に続こうとしたら、渋沢から声がかかった。 「ん?」 すぐ後ろにいる渋沢に、顔だけ向けた。 渋沢は意味深な笑みを浮かべている。 「なんだよ?」 その笑みが気にいらなくて、自然とつっかかるような言い方になった。 「偶には素直になってやったらどうだ?」 渋沢の言葉に、俺は何も答えず顔を前に戻した。 そんな俺の肩をポンっと叩くと、渋沢は部屋を出て行った。 誰もいなくなってしまった静寂の部屋で、一人ポツリと呟いた。 「それができたら苦労しねえよ」 しかも今さらながらエープリルフールネタ。ネタが浮かんだのがつい先日だったので、仕方がないってことで。 2002/04/15 |