ほら、感じることってない? 決して口に出しているわけじゃないんだけど、 あーなんじゃないか、こーなんじゃないか、って。 俺はそーゆーこと、よくあるよ。 でもさ、それは… 「お邪魔しまーす」 渋沢キャプテンが部屋を空けた頃を見計らって、その部屋に訪れる。 明日の部活の内容のことで、キャプテンは毎日この時間に部屋を空ける。 そのとき部屋にいるのは三上先輩だけ。 毎晩のように訪れているのに、こちらを振り返ってくれたことは一度もない。 別に振り返って欲しいとは思わないけど。 ドアを後ろ手で閉め、鍵を回す。カチリと鍵のかかる音が小さくする。 さすがにコトの最中にドア開けられたらヤダし? 「三上センパイ」 椅子ごと後ろから先輩を抱きしめる。 ビクっと反応して、先輩の肩がチョットだけ上がった。 毎日のように抱きついているのにぜんぜん慣れないらしい。 ホント、可愛いって言葉が似合う人だよね。 「そんなにパソコンばっかやってると目に良くないですよ〜」 先輩の服の襟元をクイッと引っ張って、見えた白い鎖骨に噛みつく。 必ず右肩。別に意味なんかないし、美味しいわけでもないんだけど噛みつく。 それがきっと合図。 先輩は軽く息を吐いてパソコンの電源を落とす。 力を抜いた三上先輩の様子に、俺は笑みを隠してキスをする。 はじめは額に。次は瞼に。そして頬に。最後に唇に。 だんだん深く。先輩は苦しいのか、必死に俺にしがみついてくる。 そのときも可愛いなぁ、って思う。 もちろん、普段の三上先輩はこんな風じゃない。 むしろ逆かな? 平気でキツイこと言ったり、俺を殴ったり蹴ったりもしてるし。(竹巳に言わせると自業自得らしいけど) でも、この時間だけは違う。 魔法がかかったみたいに大人しい。 殴ったり蹴ったりなんか絶対しないし、俺のいうことも聞くし、普段とは大違い。 まるで俺の人形みたい。 たぶん、三上先輩は俺のことが好きなんだと思う。 たぶんって一応付いてるけどほぼ確信に近い。 もちろん先輩は一度も口に出さない。けど、なんとなくわかる。 俺のほうは‥‥わからない。 自分の気持ちなのにわからないなんて変かもしれないけど、わからないんだ。 好きかわからないのに何故毎日のように抱きにくるか? それは、あの顔が癖になっちゃったから。 俺の愛撫に感じてる顔も、快楽を押し殺せず羞恥に染まる顔も、 焦らせるだけ焦らして俺を欲しそうにしてる顔もイイんだけど、 限界を超えて達する瞬間。 そのとき先輩は他にも増してすごくイイ顔をする。 なんていうのかな。艶めかしい? とにかく、こう‥腰にくるっていうか、まぁ、そんな顔。 たとえるなら麻薬みたいな感じかな。 そのときの先輩の顔は何度見ても飽きない。 飽きるどころか、もう一度見たいな、毎日見たいな、って思う。 だから抱きにきてる。先輩に無理させない程度にね。 次の日は授業も部活もあるし、三上先輩がレギュラー落ちしたらシャレにならないしさ。 竹巳に言わせると俺はかなり勘が鋭いらしい。(野生の勘とか言われた) 自分ではあまりそうは思わないんだけど、 相手の話を聞いて自分が思って尋いてみると、 何でわかるんだ?って顔をされたことは結構ある。 勘が鋭い人って自分のことはどうなんだろ? 自分の気持ちがわからないなんて俺、やっぱり鈍いのかな? あぁ、もしかしたら先輩は待っているのかな? 俺の答えが出るのを。 いつ出るのかわからない答えを。 もう出てるのかもしれない答えを。 無駄かもしれないのにね。 三上先輩は俺が好き。三上先輩は俺のモノ。 じゃあ、俺は?三上先輩が好き? うん。そうかもね。 恋愛として好きかもしれない。 はじめから嫌いじゃなかったし。 三上先輩が好きだから抱きたいって思うのかもしれない。 でもそれは単なる推測にすぎないから ここまで黒くなる予定じゃなかったんですけど偶にはこんな藤代くんもいいかなって思ったり。 2002/04/13 |