ずっと思っていたんだ いつからかなんてわからないくらい昔から 「蛮ちゃん大好き」 まるで挨拶をするみたいに銀次は俺に好きだと言っていた。 ホント、毎日のように飽きもせず。 「あ、蛮ちゃん軽く見てるでしょ?」 望んで欲していたわけじゃない。だいたい俺は信じていなかった。 「俺、本気で言ってるんだよ」 気持ちというものは常に変化していくものだから。 「ちょっと蛮ちゃん。少しは真剣に……いった〜い」 言葉も言った人が覚えていてくれなければ… 「蛮ちゃん?どうしたの?」 言葉は怖い。目に見えなくて不確かで、あまりにも軽すぎて。 言葉は怖い。いつでもいくらでも、嘘に成り得る夢想のかたまり。 「俺、バカだから気の利いたこととか、カッコいいこととか言えないけど、蛮ちゃんが好きだよ」 それはいつもと変わらない響き。それはいつもと変わらない温かさ。 「蛮ちゃんが蛮ちゃんのこと嫌いでも、俺は蛮ちゃんが好きだよ」 「銀次…」 俺は言葉なんか要らないし、欲しくない。信じられないと思う。 でも、この瞬間だけは言葉ってやつに感謝した。 そしてそれ以上に、銀次の存在に感謝した。 珍しく日付が残ってなかった作品。でもたぶん冬だろうな。元SS用なんで相変わらず短いっす。 2003/07/09(完成) |