夜の闇を照らしていくのは、目も眩むような朝の日射し。 それには程遠くても、彼は明らかに俺を照らしてくれる光。 「えっ?」 目を開けたらなにも見えない暗闇だった。 目の前に広がる黒に思考回路が停止しかけたが、とりあえずそれだけは避けて辺りを見渡す。 窓の外に見える明かりから察するに、既に日は沈み、今は夜ということか。 ここに来たのは太陽が頭の上だったから、いったいどれくらい眠っていたのだろう。 「はぁー‥‥うっ‥」 溜め息と共に起こそうとした体からこぼれた声は低かったが、ずっと殺していたから喉はそんなに痛くなかった。 それが唯一の救いといったところか。 手探りで探した枕元のライトに照らし出されたのは、呑気に寝てる猿。 散らばった二組の服とダークグレーのタオル。 「聞かれたくねぇなら咥えてな」 突然渡されて熱に浮かされながら、それでも手放さなかった。 「クソっ!」 忌々しく投げつけたら鈍い痛み再び襲われた。勝手に上がる熱に、やはり慣れることはない。 シャツを羽織り、小さいテーブルの上を見たが、目当てのものがない。 焦って下を探したら、思ったよりそれは近くにあった。ホッとして転がっていた小箱を拾いあげる。 人に物なんか贈ったことがないだろうに。 いったいどれだけの時間をかけてくれたのだろうか? 情けないことだけれど、貰ったとき、嬉しさのあまり言葉が出てこなかった。 たとえ嘘だとしても、要らないなんて言えない。 心が踊るほど歓ぶ。 そんなことはないものだと思っていた。 「どこがそんなにいいのかねぇ‥」 自分で自分がわからないとは、まさにこのことだ。 口を開けば喧嘩になるのが当たり前。言い出せば嫌なところしか出てこない。 昨夜だっていきなり抱かれて、いいようにヤられて飛ぶまで突かれて。 なのに俺は、どうしようもなくコイツでなければ駄目なのだ。 「士度‥」 抱かれるときしか触れることのない胸。 猫のように頬擦りすれば、かぎ慣れたこの男の匂い。 ちょっとクセのあるこの黒髪も、俺の名を囁く薄い唇も、この腕の中も。 一度も伝えたことはない。そのすべてが気に入っているなんて。 「サンキュ‥」 本当は言いたくて、でも面と向かっては言えなかった、そのたった一言。 名前も感謝の言葉も、本当は起きてるときに伝えたいけど、やはりまだ無理だから。 大好きなその広い胸で呟いて、額に、首に、手に、胸に、いくつものキスを落とした。 一月の夜。白衣の天使が舞い踊る夜。 たしかに寒いはずなのに、白い熱はいつまでも俺を暖めてくれていた。 士度にベタ惚れの蛮ちゃん。今回はキスマーク製造機(笑) 2003/08/18 |