あの日の窓の外は別世界だった

あのひとが見せた後ろ姿が

降り積もっていく冬の雫と同じくらい綺麗で

もう、隣には居られないと思った
















あれから何日か経った。
竹巳やキャプテンや辰巳先輩に何があっただとか色々聞かれた。
俺はすべて何でもないで突き通し続けた。
とても‥話せなかった‥







「キャプテン、遅いなぁ」
寮の出口で一人ぼやく。時計を見るともう時間がない。
早くしないと選抜の練習が始まってしまう。
‥仕方ない。呼びにいこう。
正直、行くのは気がひけたけど、キャプテンを置いていくわけにもいかない。
俺は3階のキャプテンと三上先輩の部屋を目指した。





珍しく廊下には誰も居なかった。
ここはキャプテンと三上先輩の部屋。
先輩を好きになってから毎日のように通っていた部屋。
先輩との関係が終わってから意識的に避けてきた部屋。
三上先輩がいませんように‥
心の中で願ってから一つ深呼吸をしてノックした。
コンコンと軽い音が廊下に響く。
はい。とキャプテンの声が中から聞こえたからドアを開けた。
「キャプテ〜ン、早くしないと練習始まっちゃいますよ」
「あぁ、悪い」
ふとベッド際を見ると、三上先輩が俺のほうを見ていた。
視線が絡む。
顔を見かけることはあっても、瞳を見たのは久しぶりだった。
俺は三上先輩への用事は竹巳に、先輩はキャプテンに頼んで俺たちが話すことはなくなったから。
不意に先輩が目を逸らし向こうをむいてしまった。
ズキッと胸に痛みが走る。
向けられた背中は明らかに拒絶を示していた。
「藤代?どうしたんだ?」
「‥なんでもないです」
「‥そうか?」
キャプテンが心配気に俺の顔を覗き込む。
「早く‥行きましょ」
顔を逸らして口早に言った。実際、時間はないはずだから。
「あぁ。じゃあ、三上。行ってくる」
キャプテンはくるっと振り返り、いつも通りに三上先輩に挨拶する。
「‥あぁ。行ってこい」
三上先輩は背を向けたままだったけど、いつも通りに返してきた。





「じゃあ、三上。行ってくるな」
「あぁ。勝手に行ってこい」
「先輩、ひっでぇ〜頑張れとか一言ないんすか〜?」
「渋沢、頑張れよ」
「あぁ」
「三上センパ〜イ、俺には〜?」
「お前は言わなくても平気だろ」
「そんな〜」
「あぁ〜うるせぇ!渋沢、とっとと連れてけ!」
「ほら、藤代。行くぞ」
「‥‥は〜い」
「‥藤代」
「?なんすか?三上先輩」
「頑張れよ」





相変わらずデビスマだったけど温かかった言葉。
誰に言われるよりも嬉しかった言葉。







「頑張れよ」







少し前の当たり前の風景。今は有り得なくなってしまった風景。
そう思ったら涙が零れそうになった。









――選抜にて――


「藤代、三上となにがあったんだ?」
「別になんにもないっす」
俺は今まで通り答えを返した。
でも、そんな嘘にキャプテンが納得するわけがない。
「なんにもないってことはないだろう?お前も三上も以前と態度が違う」
俺は何も言わず黙々とストレッチを続ける。
「‥三上が嫌いになったのか?」
「違う!!」
とつぜんの俺の大声に周りが一斉に振り返った。
メチャクチャ視線がいたい‥。
「藤代くん?どうかしたの?」
「いや、監督、なんでもないっす。気にしないでくださ〜い」
作り笑顔で手を振って何とかごまかす。
はぁ‥
「そう?じゃあ次はランニング。
 アップが終わった者からフォーメーションの準備をして」
「「「「「はい!!!!!」」」」」





「藤代、なにがあったのか話してくれないか?」
「‥前の状態に戻っただけっす」
ランニングをしながら再び話し掛けてきたキャプテンの顔を見ずに俺は答えた。
「前の?それは付き合う以前のという意味か?」
俺は小さく頷いた。
「三上がそう言ったのか?」
「いえ、言ったのは俺です」
「でもさっき三上が嫌いになったのかと聞いたら違うと‥」
キャプテンの言葉に俺はまた頷いた。
「じゃあ、どうして‥」
「恐かったから」
「恐い?」
「俺、どんどん欲張りになっていくから」
どんどん醜くなっていくから。
「三上先輩は俺とのことは遊びでした。それはわかっていた」
先輩にとってはただの遊び。
たとえ自分は本気であっても。
「だからかるく返してました。俺はそれでも構わなかったから」
傍にいられるなら。あの人が手にはいるのなら。それで、よかった‥
「でも、もっと欲しいって‥身体だけじゃ嫌だって‥」
独占したい。
ネェ、オレダケヲミテ‥
縛り付けたい。
オレダケノモノニナッテ‥
すべてを壊したい。
「そう思ってる自分に気付いて‥壊してしまいそうで‥」
自分が恐くなったから‥
この底を知らない独占欲が
いつかあの人を壊してしまいそうでだから本当に壊してしまう前に離れた。
「何よりも自分が恐かったから‥」
「‥確かに始めはそうだったかもしれない」
キャプテンの言葉にチクリと胸が痛んだ。
「でも今の三上にとってお前がどれくらいの重みを持っているか
 確かめてみたほうがいいんじゃないか?」
俺は黙って前を見つめた。




























あとがき

ということで藤代くん視点の話でした。
なんか私の藤三ってこういう設定ばっかですね。
ん〜〜甘々書けないかしら‥

2002/01/27



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