ねぇ、まだ気づかない? まだわからない?

もう物語は始まっているんだよ

本当の雨は止んでいないんだよ


















今日の天気は晴れ。
私は昨日と同じように図書館に来た。そして昨日と同じようにカウンターに座る。
今日の当番もサボりか。怒りよりも呆れが先にくる。
確かに、本が好きじゃない人にとって、図書当番はつまらないものでしかないのかもしれない。
でも、自分に課せられた仕事なのだから責任を持ってやって欲しい。
そう思うのは理不尽なのだろうか。
とりあえず明日はちゃんと来るように注意しておかないと。
まぁ、注意しても来るかどうか危うい所だけれど。
だからと言って言わないわけにもいかない。
はぁ‥と溜め息が漏れた。



一通りの雑務が終わり、ふと彼がここ数日座っていた窓辺の席を見る。
いるのが当然のようになっていた其処に彼の姿はなくて。
‥郭くん、今日は来ないのかしら?
今まで来ていなかったんだから、もう来ないかもしれない。
静かに彼が座っていた席に座り、机に頬を寄せた。
そして目を閉じる。
「‥冷たい‥」
昨日のあの不可解な行動。
あれはいったいなんだったんだろう。
あの時は、ただ自然と身体が動いた。
まるで何かに操られてるみたいに。でも何になのかはわからなくて。
ただ、心の靄が重すぎて泣きたくなって他の誰でもなく郭くんに助けて欲しいと思った。
あの優しい手に縋りつきたかった。





「郭くん‥」





郭くんとキスした瞬間、覆い尽くしていた靄が消えた。
なのに、また靄に取り巻かれてる。
以前のよりずっと重く濃い靄に。
この感情は何?





できることなら

もう一度‥

もう一度だけ‥‥





そこまで考えてハッとする。
「馬鹿みたい‥」
自分は今なにを考えてたんだろう。
一人で図書館にいるから昨日の今日だから馬鹿なことを考えてしまうんだ。
司書室にいる先生に言付けて早めに図書館を閉させてもらい、学校を出た。





家に着くと、すぐに着替えた。
そしてそのままベッドに横になる。
なんなの。なんなのよ、この感情は。
重くて重くて息も出来ないくらい苦しい
なのに身体が浮遊しているかのように軽くて
周りにあるものすべてが凍えてしまいそうに冷たい
なのに体の芯から溶けてしまいそうに熱くて
矛盾だらけでわけがわからない。










お願い

誰かこの感情の名前を教えて‥――


















to be continued…













あとがき

ヒロインの名前‥出てきてないですね。
だって誰とも会話してないし仕方ないってことで。
次は英士くん視点です。
たぶん結人と一馬が出張ります。

2002/02/14



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