青く澄み切った空には雲一つなく、すがすがしい。
頼まれてた仕事が終わって、ちょっと出来た隙間時間。
夕方からは神楽たちが花見をやるって言ってたから騒がしくなる。
別にイヤってわけじゃねぇが、たまには大人な時間も過ごしたいんだとか考えながら歩いていると、黒い人影が桜の木の下にあることに気づいた。
その横顔。
変に跳ねる鼓動に、おいおい乙女じゃあるまいしと自らツッコミを入れて、歩み寄っていく。
「よお」
声をかけると、ポケットに手を突っ込んだまま奴は振り返った。
「万屋か」
ふわりと、あたたかく優しい風が頬を撫でて心地いい。
眉間のしわが浅い。今日は機嫌がいいらしい。
「仕事終わりか?」
「まぁな」
そう答えると、土方は目の前の立派な桜の木を見上げた。
「見事なもんだな」
「ああ」
薄紅色に染まる桜は、ゆっくり左右に揺れながら花びらを散らし、俺たちを見下ろしている。
ここ数日ですっかり暖かくなった。
つい先日まで息が真っ白だったっていうのに。
「・・・」
土方の横顔を見てから、その視線の先の桜へと視線を移した。
なんとなく漂う、二人でいるときだけの独特の空気。
この空気感が最近気に入っている。
「お前、今日は夜、仕事?」
「あぁ。最近花見をするやつが多いからな。酔っ払いも増えるから見回りがある」
「そっか。お巡りさんは大変だな。どこの見回り?」
「桜祭りのとこだ」
「あ、マジか?ちょうど今夜俺もそこで花見すんの。神楽たちと」
もしかしたらあっちで会うかもしれない。
神楽たちもいるからどうってわけじゃないけど、逢えたらちょっとうれしいなーなんて。
俺は期待しているが、こいつはどうなんだろう。
「なんだよ?」
「いや。ここの桜もきれいだけどさ、あそこの夜桜もきれいなんだろうなーって思ってよ」
「今はどこも満開らしいからな」
うれしそうな横顔を見て笑いそうになる。
言わねぇけど、こいつはほんとに桜が好きだよな。
わかりやすい。
「・・・なんだよ?」
「べつにぃー」
じっと見てたら訝しげににらまれたので、視線を外す。
「まぁ、お勤めがんばれや。じゃあな」
片手をあげてあいさつすると、土方に背を向けて歩き出した。でも、五、六歩、進んだところで立ち止まる。
ふりかえってみると、さっきの場所にまだ土方は立っていて、こっちを見ていた。
「・・・」
待っとく。
ゆっくりと。声には出さず、唇だけ動かした。
「・・・!」
わかるかどうか。伝わるかどうか。
どっちでもよかった。
あいつが来なきゃ俺から行くしな。
「・・・・おう」
小さな返事が聞こえて、うれしくなって、俺は穏やかな気持ちに包まれた。
となりで同じ景色を眺められたなら・・・
銀さん視点なら書けそうだなってCP決めずに見切り発車で書き始めたらどっちつかずに(汗)
片思いで書いてたんですが、アラサーだとどっちからも変な意地が生まれてただの知人化したんで、両思いで書き直し。
何がやばいって銀ちゃんの名前忘れてたー!!ごめんよー
2022/4/03
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