青く澄み切った空には雲一つなく、すがすがしい。
目当ての人に会うためその執務室へと行こうと歩いていると、人影が桜の木の下にあることに気づいた。
「あれは・・・」
遠目でも誰なのかわかったので、心を浮きだたせながら歩み寄っていく。
「なーにしてんの？」
後ろから声をかけるとバラライは振り返った。
「やぁ、来てくれたのかい？」
あたたかく優しい風が、頬を撫でて心地いい。
その心地よさを増幅するのはバラライの表情。
「この木、桜だったんだ。きれいだね」
「そうだね」
そういって視線を桜に移す。
薄紅色に染まる桜は、ゆっくり左右に揺れながら、アタシたちを見下ろしている。
ここ数日ですっかり暖かくなった。
つい先日まで粉雪が舞っていたというのに。
「・・・」
桜を見上げながら、ひそかに思いを寄せるキミの横顔も見つめる。
こうしてチョコチョコと用を見つけては顔を出しているけど、まだただの知人の域を出ない関係。
正直、アタシの名前も知ってるかどうか。
いや、頭がいいやつだからアタシの名前は知ってると思うけど。
ユウナやパインと違って、アタシはまだ名前を呼ばれたことがない。
一緒に見れてうれしいのに、苦しい。
何か考えごとをしてるのか、遠いまなざしで桜を見つめるキミの横顔を見つめていた。
ひそかに思いを寄せるキミの横顔を。
エボンの議会の議長という立場で初めに出会ったから、きっと印象はよくなかった。
話しかけても警戒しているのが丸わかりなくらいで。
やっとこうしてなんでもない会話ができるくらいまでの距離になった。
でも、まだ友人と呼べるほどまでにはならなくて。
まだこの気持ちは伝えられないけれど、来年もこうしてキミと一緒に見れたらうれしい。
「ねぇ」
「ん？なにかな？」
突然呼ばれて少し驚いていると、僕を見つめながら彼女はやさしく微笑んだ。
「来年も一緒に桜を見ない？」
「・・・！」
同じことを考えてくれていたのかもしれない。
そう思ったらうれしくなって僕は自然と微笑んだ。
「もちろんだよ」
また来年もその次も、ずっとあなたの隣で・・・
アーリュやティユウじゃ切なさが生まれちゃってダメなので彼らにお願いしました。
宥めてるのはバラライに見せかけて、リュックが見守ってる感じ希望。
2022/3/24